インタビュー
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夫婦で掴んだ2度のパラリンピック出場 楽しむ柔道から学んだこと (2/2)
視覚障がい者柔道 廣瀬順子選手
「必死に練習をするからこそ楽しさを感じ、笑顔になれる瞬間がある」

視覚障がい者柔道の特徴は、互いに組手を取った状態から試合が始まる点にある。「技の攻防がすごく激しいですし、一本の多い柔道と言われている。そこが魅力でもあると思います」。試合開始時の体勢を除けば、一般の柔道とルールはほぼ変わらないが、廣瀬選手は「私の中では違う競技だと思っている」と話す。
「初めから組み合う視覚障がい者柔道は、力の入れ具合だったり技に入るタイミングだったり、組手を争う一般の柔道とは違うものとして考えた方がいい。最初はその違いに戸惑いました」
また、少ない視覚情報を補うために、その他の感覚をフル活用。「視界の見えない部分は相手の力の入れ方や抜き方の変化を感じながら、技を掛けたり防いだりしています。わざと自分が力を抜いたり、相手が技に入る時に力が抜ける瞬間を狙ったり、感覚を大事にしています」と、対戦中の繊細な駆け引きに醍醐味を感じている。
柔道を楽しく感じるようになったきっかけは、夫・悠選手の言葉だ。出会った当初も「柔道は笑ってはいけない、怒られないように練習するもの」と考えていた廣瀬選手は、練習中に笑顔を絶やさない悠選手を見て「自分と違いすぎて理解できず、不真面目だと思っていました(笑)」。だが、その明るい人柄に惹かれて結婚。毎日一緒に練習を始めると、こう声を掛けられたという。
「『練習中に笑ってもいいし、楽しんでもいいんだよ。きついことこそ楽しくした方が強くなれるよ』と。そう言われてみると、必死に練習するからこそ楽しさを感じ、笑顔になれる瞬間があるんだと気付きました」

少し肩の力を抜いて柔道と向き合うと、色々なことがポジティブに捉えられ、競技者としての成長にも繋がった。その効果は、夫婦揃ってパラリンピック2大会出場という事実が雄弁に物語っている。
「自分が投げられた時も、相手がどういう風に技を掛けて投げたかを考えるとワクワクしますし、自分より強い人の膝をつかせることができるなど、進歩が見える瞬間があるとすごく楽しい。昔は、自分を誰かと比べたり、怒られないように練習していました。でも今は、自分の成長を感じるために練習することが『楽しむ』ということじゃないかと感じています」
2024年のパリパラリンピックに向けて、視覚障がい者柔道は大規模なクラス分け変更を行った。これまでは障がいの程度に関わらず体重別で男子7階級、女子6階級となっていたが、今後は全盲と弱視の2クラスに分かれ、体重別は4階級ずつに減少。このため、日本では廣瀬選手が戦う弱視57キロ級に選手が増え、代表争いが激化する。
「すごくライバルが増えたなと感じています。でも、国内で切磋琢磨し合える環境はすごくいい。競う人がいた方が成長できると考えて頑張ろうと思います」
笑顔が生む成長と強さを原動力に、パリまでの日々を邁進する。
(当記事は2022年6月に新型コロナウイルス感染症対策を行った上で取材・撮影を行いました。)
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廣瀬 順子ひろせ じゅんこ
1990年10月12日、山口県生まれ。小学校5年生の時に柔道を始め、高校では全国高等学校総合体育大会(インターハイ)出場を果たす。大学1年生の時に膠原病を患い、その影響で視野が狭まる視覚障がいに。一度は柔道から離れたが、ゴールボールの大会で選手の姿に触発され、視覚障がい者柔道で競技に復帰。2014年アジアパラ競技大会で2位、2015年のIBSAワールドゲームズでは5位となった。同じ視覚障がい者柔道で活躍していた悠選手と2015年に結婚し、夫の指導も受けながら成長。2016年のリオデジャネイロ、2021年の東京とパラリンピック2大会に夫婦揃って出場。リオデジャネイロ大会では銅メダルを獲得し、東京大会では5位となった。
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